EC通販企業のMMM活用事例:テレビCM開始後の効果が見えない問題をどう解決したか
はじめに
「テレビCMを始めたが、本当に売上に貢献しているのか分からない」——これは、デジタルマーケティングに強みを持つEC通販企業がオフライン広告に進出する際、必ず直面する課題です。
本記事では、年商20億円の健康食品EC企業がMMMを導入し、テレビCMの効果を可視化してROAS 23%改善を実現した事例を紹介します。
企業プロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | 健康食品EC通販 |
| 年商 | 約20億円 |
| 年間広告費 | 約3億円 |
| 主要チャネル | テレビCM、リスティング広告、SNS広告、アフィリエイト、同梱チラシ |
| 課題 | テレビCM(年間1億円)の効果が不明、デジタルとの連携が見えない |
導入の背景と課題
なぜMMMが必要だったか
同社はデジタル広告で成長してきましたが、成長率が鈍化。経営判断でテレビCMに年間1億円を投下しました。しかし半年後:
- CPAが悪化:全体CPAが15%上昇
- テレビCMの効果が不明:「テレビを見て買った」と答える顧客はほぼゼロ
- 社内の対立:デジタルチームは「テレビCMは無駄」、ブランドチームは「認知向上に必要」と平行線
MMM導入で解きたかった問い
- テレビCMは売上にどの程度貢献しているのか?
- テレビCMはデジタル広告の成果を押し上げているか?
- 3億円の広告予算をどう再配分すべきか?
導入時に直面した難しさ
難所1:テレビCMデータの取得
最大の壁はテレビCMのデータ取得でした。広告代理店から提供されるレポートはGRP(延べ視聴率)ベースの月次データのみ。MMMには週次の出稿額またはGRPが必要です。
具体的に何が難しかったか:
- 代理店にMMMの概念を説明し、週次データの提供を依頼するのに1ヶ月かかった
- GRPデータを「出稿額」に換算する際、スポットCMとタイムCMで単価が異なり、按分ロジックの合意に時間がかかった
- 最終的にはGRPデータをそのまま使い、金額換算は行わない方針に変更
→ 学び:テレビCMデータは「完璧な金額」にこだわらず、GRP等の活動量指標で十分分析可能。
難所2:アフィリエイトの成果報酬型データ
アフィリエイトは成果報酬型で、「広告費」が事後的に確定します。MMMの入力として:
- 確定前の概算値を使うか
- 確定後の実績値を使うか
確定後データは2ヶ月遅れで届くため、タイムリーな分析ができません。
→ 解決策:アフィリエイト経由のCV数を代理変数として投入。費用ではなく「活動量」で効果を推定する方式に。
難所3:「ベースライン売上」の高さ
初回分析の結果、ベースライン(広告なしで発生する売上)が**売上全体の65%**と推定されました。これは「広告費3億円をかけても、売上の35%しか広告で説明できない」ことを意味します。
経営層からは「3億円も使って35%しか効果がないのか?」という反応。
→ 説明の工夫:ベースラインにはリピート顧客の自然購入、SEO流入、ブランド力が含まれること、また広告がベースライン自体を長期的に押し上げていることを丁寧に解説。
分析結果と発見
テレビCMの「見えなかった効果」
MMMにより、テレビCMの3つの効果が可視化されました:
| 効果 | 内容 | 推定貢献 |
|---|---|---|
| 直接効果 | CM視聴→サイト訪問→購入 | 売上の8% |
| 検索リフト効果 | CM放映後のブランド検索増加 | 売上の5% |
| CVR向上効果 | リスティング広告のCVRが1.4倍に | 売上の3% |
テレビCM単体のROIは1.6xでしたが、間接効果を含めると実質ROI 2.4xに。
チャネル別の適正投資額
MMMの飽和曲線分析により、各チャネルの「投資の天井」が明確になりました:
チャネル | 現状投資 | 適正投資 | 判定
テレビCM | 1億 | 8,000万 | やや過剰投資
リスティング | 8,000万 | 1億 | 投資不足
SNS広告 | 5,000万 | 6,000万 | やや投資不足
アフィリエイト| 4,000万 | 3,500万 | やや過剰
同梱チラシ | 3,000万 | 2,500万 | やや過剰
施策と効果
予算再配分の実施
総広告費3億円は据え置きのまま、MMMの推奨に基づき以下の予算移動を実施:
- テレビCM:1億→8,000万(-2,000万)
- リスティング:8,000万→1億(+2,000万)
- SNS:5,000万→6,000万(+1,000万)
- アフィリエイト:4,000万→3,500万(-500万)
- 同梱チラシ:3,000万→2,500万(-500万)
6ヶ月後の効果
| 指標 | Before | After | 変化 |
|---|---|---|---|
| 月間売上 | 1.67億 | 1.92億 | +15% |
| 全体ROAS | 6.7x | 7.7x | +15% |
| 新規獲得CPA | 12,000円 | 9,200円 | -23% |
| テレビCM ROI(間接含む) | 2.4x | 2.8x | +17% |
12ヶ月後:想定外の副次効果
- テレビCMのクリエイティブ改善:MMMで「商品説明型CM」と「ブランドイメージ型CM」の効果差が判明。前者のROIが2倍高く、CM制作方針を変更
- リスティング広告の入札戦略見直し:テレビCM放映週はCVRが高まるため、CM放映スケジュールと連動した入札単価の自動調整を導入
- 経営報告の質の向上:「テレビCMの効果は測定不能」から「ROI 2.8xで投資回収済み」と報告できるようになり、次年度のテレビCM予算が確保
この事例から学べること
- テレビCMの効果は「直接効果」だけでは測れない — 間接効果(検索リフト、CVR向上)を含めると評価が大きく変わる
- データ収集が最大のボトルネック — 特にオフラインチャネルのデータ取得には代理店との連携が不可欠
- 完璧なデータを待つより、80%の精度で始める方が良い — GRPやCV数など代理変数でも十分実用的な分析ができる
- MMMの結果は「社内コミュニケーションツール」としても機能 — チーム間の対立をデータで解消できる
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