はじめに:MMMの結果は「因果」と言えるのか
マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)は広告の「効果」を推定するためのツールですが、ここで言う「効果」とは本当に因果的な効果なのでしょうか。
多くのMMMの実装は、本質的には回帰分析(統計的な相関関係の推定)です。しかし、マーケターが知りたいのは「テレビCMを1,000万円増やしたら、売上はいくら増えるか」という因果的な問いです。相関と因果を混同すると、広告予算の配分を誤り、無駄な投資や機会損失を生むリスクがあります。
本記事では、因果推論の基礎フレームワークを学び、MMMをより因果的に解釈・強化するためのアプローチを解説します。
なぜ「相関≠因果」がMMMで重要か
相関と因果の違い
| 観点 | 相関 | 因果 |
|---|---|---|
| 定義 | 2つの変数が一緒に変動する | 一方の変化が他方の変化を引き起こす |
| 方向性 | なし(双方向) | あり(原因→結果) |
| 操作可能性 | 一方を変えても他方が変わるとは限らない | 原因を操作すると結果が変わる |
| MMMでの例 | 「広告費が多い週は売上も多い」 | 「広告費を増やすと売上が増える」 |
MMMが相関に留まるケース
前回の記事で解説した内生性の問題(逆因果性、欠落変数バイアス、セルフセレクション)が存在する場合、MMMの推定結果は因果ではなく相関に過ぎない可能性があります。
典型的な相関の罠:
「売上が増える時期に広告費も増やす」
→ MMMは「広告が売上を増やしている」と推定
→ 実際は「売上予測が広告費を増やしている」(逆因果)
→ この推定値に基づく予算配分は過剰投資を招く